業務の非効率性を放置し、社員の貴重な時間をルーティンワーク(定型作業)に費やしていませんか? RPAやChatGPTなどの汎用的な生成AIの導入を進め、業務効率化を目指す企業が増えています。しかし、それだけでは真の競争優位性は得られません。
今、経営層やDX推進リーダーが注目しているのが、自社のデータと知識を学習し、自律的に業務を代行するAIエージェントです。
本稿では、AI初心者がすぐに始められる生成AIツールの活用から、企業の未来を左右するAIエージェント戦略までを解説します。御社のDXを加速させるヒントになれば幸いです。
生成AIを業務に使おう! 基礎知識と事例紹介

「生成AIって、どうやって仕事に使うんだろう?」という方に向けて、職種別の活用事例をご紹介!
業務で活用するにあたって抑えておきたい生成AIの基礎知識も解説していますので、「よくわからないけれど生成AIには興味がある」という方にぴったりな資料です。
なぜ今、AIエージェント活用が必要なのか
私たちは日々の業務の中で、メール処理、資料作成、情報リサーチといったルーティンワークに膨大な時間を費やしています。
しかし、RPAや生成AIが普及した今、人間が集中すべき仕事とは、人脈を活かしたコミュニケーションや、日常的な交流から得た気づきなど、情報(データ)としてAIに与えることが難しい部分をいかにして得るかになっています。
多くのビジネスパーソンは、今後より創造性の高い業務に時間を投じるために、ルーティンワークをAIに任せてより生産性を高めていくことが求められていくでしょう。
現在、生成AIはまだ発展途上であり、幾何級数的に能力が伸びると予測されています。競争が激化する前にAIに触れ、業務に組み込むことは、ほぼ平等に得られる大きなチャンスと言えるでしょう。
従来のAIツールとAIエージェントの違い
従来の生成AIが、人間の指示に従って情報を生成・アシストすることを目的にしていた(Copilot/副操縦士)のに対し、AIエージェントは、目標を達成するために自律的に計画を立て、意思決定を行い、行動するAIシステム(Pilot/操縦士)へと進化しています。
特徴 | 従来の生成AI(Copilot型) | AIエージェント(Pilot型) |
---|---|---|
機能の核 | 情報の取得、コンテンツ生成 | 目標達成のための行動代行 |
タスク処理 | 単一のタスク、単一の応答 | 複雑な業務、複数のタスクを順番に実行 |
記憶力 | 短期記憶(チャットの文脈内に限る) | 長期記憶を持ち、失敗も学習して改善する |
実行性 | 指示(プロンプト)が必要 | 自律的に計画を立て、タスクをこなす |
上記表のように、AIエージェントは「計画→実行→検証」のPDCAサイクルを自律的に回すことができます。
失敗したことを長期記憶として保存し、次回以降の行動を効率化・高精度化できるため、使えば使うほど賢くなり、コストも削減されるというメリットがあります。
DXの土台を築くための生成AI活用法3選
IT初心者やDX推進途中の組織が、まずAIの有用性を実感し、社内での導入を促進するために、すぐに活用できる実用的な生成AI活用方法を3つご紹介します。
これらは、AIエージェントが最終的に行う「計画」「実行」「学習」といった要素の基礎を体験できます。
ChatGPTの 「GPTs」でルーティン業務の自動化
ChatGPTのカスタム機能「GPTs」は、定型的な指示やルーティン作業の負担を解消してくれます。
GPTsによる定型作業の削減
毎回同じ業務で、同じような定型プロンプトを入力するのは手間です。GPTsを使えば、定型プロンプトを記録し、いつでも呼び出すことができます。
例えば法人利用の場合、フォーマットの決まった議事録の要約出力であれば、あらかじめ議事録のプロンプトをGPTsに用意しておけば、議事録の音声データをアップロードするだけであっという間にいつもの議事録を作成することができます。

タスク配信による情報収集
特定の情報を自動的かつ定期的に配信させるタスク機能を活用すれば、「毎朝7時にAI関連の注目ニュースを10件、表形式で送ってください」といった日常的な情報収集の負担をGPTに解消することができます。
※いずれもChatGPTの有料機能です(2025年10月時点)。
Geminiの「ディープリサーチ」で高度な調査・分析の高速化
Geminiのディープリサーチ機能は、単なる検索を超え、自律型のAIエージェントとして機能します。
コンサルティングレベルのレポート作成
複雑なテーマについて、AIが自律的に計画を立て、複数の情報源を参照し、深く考察したレポートを作成します。人間が数時間かけて読む分量の情報を、わずか5分~30分程度で分析し、質の高い結論を出すことが可能です。
営業・商談前のマナーとしての活用
クライアントや競合他社の情報を細かく分析し、相手が過去にどのような発言や活動をしてきたかを把握できます。
操作画面サンプル


実際に出力したレポート https://www.rpa-roboffice.jp/wp-content/uploads/2025/10/RPA市場予測と生成AIの影響.pdf
※こちらのレポートはGemini DeepResearchで出力したそのままの内容です。内容の確認・編集はしておりませんので、事実とは異なる内容が含まれている可能性があります。機能のサンプルとしてご覧ください。
知識の構造化と学習の効率化が叶うNotebookLM
NotebookLMは、社内に蓄積されたドキュメントや個人が収集した長文データを活用するための、自分専用のAI知識ベースを構築することができます。
知識ベースの構築
PDFやメモ、YouTubeと言った情報(ソース)を貼り付けると、それを参照したカスタムチャットボットをすぐに作成できます。法人利用のほか、個人利用の場合であっても例えば政府公開情報など、広く公開されている情報を多く集めて分析することで、パーソナライズされた深い知識として活用が可能になります。
ポッドキャスト生成
貼り付けた難解なテキスト情報や長いYouTubeの文字起こしを、ポッドキャストやラジオのような音声コンテンツに変換できます。これにより、移動時間などのスキマ時間を使って「耳で学習」することができ、インプットの速度と定着率を向上させます。

企業競争力を左右するAIエージェント戦略
ツールによる業務効率化に成功したら、次に取り組むべきは企業の競争優位性直結する社内AIエージェントの導入です。
「プライベートAI」への転換
AIの活用が一般化すると、パブリックなAI(ChatGPTなど)を使っているだけでは他社との差別化は困難になります。企業が競争力を得て、その価値を高めるためには、自社の貴重なデータを活用するプライベートAIの実現が不可欠です。
プライベートAIとは
プライベートAIとは、自社のデータを安全に保管し、それを学習データとして利用して、パブリックなLLM(大規模言語モデル)と組み合わせることで、企業独自の回答や意思決定を可能にする仕組みです。
トヨタのプライベートAIとホンダのプライベートAIでは、その企業の歴史データや個性が反映されるため、全く違う個性を持ったAIが誕生します。
このプライベートAIを実現するためには、AIエージェントが自社のデータ環境(AWSなどのパブリッククラウド上に構築した閉じたプライベート空間)にアクセスし、自律的に業務を遂行することが重要になります。
ベテランのノウハウの継承
製造業などの分野では、ベテラン技術者の退職により、データやファイルに残っていない「暗黙知」(意識されない知識や経験則)が失われてしまう、という喫緊の課題があります。
社内AIエージェントは、この暗黙知の継承をスムーズにしてくれる可能性を秘めています。
- 知識のインプット:まず、専門家の知識をデータやファイルとしてAIエージェントに学習させます。
- フィードバックによる暗黙知の抽出:AIエージェントに同じ業務をさせた時、専門家(エンジニアなど)に回答をフィードバックさせます。普段意識していない「こういう観点でやるべきだ」という指導の中に、暗黙知が現れます。
- 長期記憶への蓄積:このフィードバック内容をAIエージェントの長期記憶として蓄積し、賢くしていくことで、AIエージェントは熟練者の経験値を学習したAIとして機能します。
この結果、若い社員でも、熟練技術者のノウハウを学習したエージェントを活用できるようになり、技術が途絶してしまうリスクを防ぐことが可能になります。
エージェント導入のステップ
AIエージェントの導入は、難易度の低いものから段階的に進めることが推奨されます。
ステップ① シングルエージェントの導入
まずは特定の分野の専門的な知識を持たせたエージェントを一つ作ります。これは、一人の人間で完結するタスク(例:特定の営業資料の自動生成、単一のフォーム入力自動化など)を代行させるためのものです。単一タスクの自動化に成功することで、AIの有用性を社内に浸透させます。
ステップ② マルチエージェントシステムへの発展
複数のエージェント(例:プロダクトマネージャーエージェント、プログラマーエージェント、テスターエージェント)にそれぞれの専門性を担わせ、連携させて実行するチーム型の共同作業の自動化を目指します。これは、複数の人が協力して完成させるような複雑な業務(例:ソフトウェア開発の要件定義からテストまでの一連のワークフロー)を代行させます。
ステップ③ ガバナンスと連携の設計
マルチエージェントを導入する際は、セキュリティリスク(一人のエージェントに権限が集中すること)を最小化するため、各エージェントが必要最低限の情報にしかアクセスできないように設計したり、連携のルールをあらかじめ標準作業手順書として定義したりすることで、連携の乱れを防ぐことが重要です。
すぐにAIエージェント開発を始めるために
AIエージェントの開発と聞くと、プログラミングスキルが必要だと考えがちですが、今は非エンジニアでも開発が可能です。
ノーコード/ローコード開発の時代
AIアプリケーションの開発は、プログラミング言語(コード)ではなく、自然言語(プロンプト)で実装していくことが主流になりつつあります。そして、この開発をサポートするノーコード/ローコードのプラットフォームが多数登場しています。
Dify(ディファイ)
オープンソースのAI開発プラットフォームであるDify(ディファイ)は、、プログラミング不要でAIアプリやエージェントを構築できるオープンソースの開発プラットフォームです。
直感的な操作で複雑な処理フローやAI連携を実現でき、コミュニティが活発で毎週のようにアップデートが行われているため、企業での活用実績も多く、最初の開発プラットフォームとしておススメです。
Difyのようなツールを使えば、LLM(言語モデル)を動かすブロックや、知識ベース(自社データ)を参照するブロックなどを線で繋いでいくだけで、複雑なAIエージェントの処理フローを構築できます。

Copilot Studio(コパイロット スタジオ)
Copilot Studio(コパイロット スタジオ)は、マイクロソフト社が提供するノーコードAI開発プラットフォームです。直感的な操作でAIエージェントや会話型ボットを構築でき、業務自動化や顧客対応など多様な用途に活用できます。
Microsoft 365のアプリの一つで、すでにこちらを導入している企業にとっては低コストで始められるため、こちらもおすすめです。また、すでにMicrosoft 365を導入している企業であれば、セキュリティ面でも安心して導入を進めることが可能です。
まとめ
AIの進化は加速し、AIエージェントの時代が到来しています。これは、単に作業を効率化するだけでなく、組織の持つ独自のノウハウや知識をAIに学習させ、真の競争優位性(プライベートAI)を確立するための戦略的な転換点です。
まずはChatGPTのGPTs機能やGeminiのディープリサーチ機能といった身近なツールでAIの自律的な振る舞いに慣れ、その上でDifyなどのノーコードプラットフォームを利用して、自社専用のAIエージェントの試作を始めてみてください。
もし、こうした生成AIツールの活用やAIエージェントの構築が自社で難しい場合は、協力会社に依頼するのも有効な方法です。
ロボフィスではDifyやCopilot Studioを利用して、クライアント企業にとって使い勝手のよい安全なAIエージェント構築をお手伝いしています。
お見積りは無料ですので、お気軽にご相談ください。
AIエージェントの活用は、企業の未来を決める重大な意思決定です。
この大きな転換期を逃さず、ルーティンワークの時間を組織を動かす創造的な仕事に投じるために、一歩を踏み出してみませんか。
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