会社のバックオフィス担当としてRPA導入・運用を支える初心(はつこ)さん。ある日、部長に「大切な話がある」と呼び出されました…。
RPA導入の件が評価されて、今度会社に「DX推進部」ができることになったんだ。そこに初心さんも異動してね。
DX推進って何するんですか???
ゼロからわかる!RPAと導入のコツ
「RPAとは?」「RPA導入を考えているけれど、どうすればいいのかわからない」といった方に向けて、わかりやすく解説した資料です。
DXの進め方の前に:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DX推進部でお世話になってる外部コンサルタントの進方(しんぼう)さん! そもそもDXってなんですか?
わからないってすぐ聞けるのはとっても大切なことです。素晴らしいですね! 一緒にDXを学んでいきましょう!
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX<デジタルトランスフォーメーションl Digital Transformation>
「企業がビジネスの激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会ニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
経済産業省「DX推進ガイドライン」より
簡単に言うと、「データ(IT)を活用することで新しい価値を生み出すこと」です。
私たちの日常生活も、インターネットをはじめスマートフォンやIoT家電などで劇的に変化していますよね。ネットショッピングすることが日常になったり、毎日ビデオ会議をしていたり…。こういったことが世界中で起きています。
ネットや便利なツールを使うことがDXなんですか?
よく誤解されますが、ちょっと違いますね
たとえば、インターネットの登場でクラウドサービス※が誕生しました。これで会社のデータや書類がどこにいても確認できるようになりましたよね。
※利用者側がパソコンや端末などを介してインターネットやWebブラウザ上でデータやソフトウェアを利用できるサービス
このクラウドサービスが生み出した新しい価値は「インターネット上にデータを保存する」という機能ではありません。「どこにいてもオフィスと変わらず働ける」という新しいライフスタイルそのものになります。
新しい価値ってそういうことか! じゃあクラウドサービスを導入しても、出社を義務付けていると…
本当の意味でのDXではないかもしれないですね…
これまで、デジタルツールは電子記録や数値として過去のデータを蓄積していくことが求められてきました。これからの時代は、この蓄積したデータやその仕組みを活用することで、さらなる効率化や、新たな顧客サービスの提供など、ビジネスチャンスを発掘していくことが大切になります。
このように、デジタルを使って組織を変革し、新しい価値を生み出していくことをDXと言います。
なぜDXを進める必要があるの?
そもそも、どうしてDXってしないといけないんですか?
一つ目は、インターネットの普及で国家間のタイムラグがなくなり、世界中でビジネスができるようになったからです。
インターネットによって国家間の距離はぐっと縮まり、情報の伝達にはほとんどタイムラグが発生しません。つまり、ビジネスにおける競合は国内企業だけでなく、世界に広がっていきます。そうすると、DXを進めないことでDXを進める世界中の競合他社に後れを取り、経営に大きな打撃を与えることにもつながりかねません。
要はDXで「世界中の会社がライバルになるから戦える武器をつくろう」って話ですよね? でも、うちの会社ってそんなグローバルな感じじゃないですよ?
自分から海外に出ていかなくても、向こうから来るかもしれないですよね。それに、革命的な変化が起こってビジネスのルールごと変わる可能性もありますよ。
日本発のグローバル企業が誕生することもあるでしょうし、逆に海外から日本市場に参入してくることも大いに考えられます。海外の事業会社すべてが国内企業よりも優れているわけではありませんが、とくに成果主義の欧米企業は日本よりも効率やコストにシビアだと考えておくといいでしょう。
その時に「自社は新規参入企業に対して勝算があるのか?」という視点が必要になります。
極論ですが、日本文化を海外に紹介するなど、海外に競合がいない市場の場合はもしかするとDXの必要はないかもしれないですね
二つ目は、市場変化の加速に対応するためです。
インターネットの普及で、世界中が市場になったと同時に、世界中の人々がつながり、互いに影響し合ってトレンドが変化するスピードはこれまでにないほどです。
VUCA※の時代と言われる現代において、市場で生き残っていくためには変化に対応できる用意を整えておくことは、企業経営における必須事項と言えます。
※変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会情勢のこと。
市場が変化する、ということはどういうことなのか?
たとえばiPhone。登場してから他社が一気に参入し、スマートフォン市場が広がって、それまで当然だったガラパゴス携帯電話は、高齢者向けといった限定的なモデル以外はその姿を消してしまいました。
コンビニATMは、それまで「銀行の窓口、あるいは支店設置ATMに営業時間内に並ぶ」という概念を覆し、24時間365日口座からお金を引き出せるようになりました。今では銀行ATMでさえコンビニATMに業務委託するようになり、コンビニATMは私たちの生活インフラとなったのです。
近年では企業-個人、個人-個人の送金や海外送金サービスもコンビニATMで行えます。
このように、いつ革命的なビジネスが登場して、自分たちのビジネスモデルが瓦解するかわからない時代となりました。変化に付いていくためには、やはり一定のデジタル化・自動化は必要ですし、いつでも自社で新たなビジネスモデルを用意できる体制づくりが重要です。
今の説明だと「絶対に変化しない特徴がある商材」を「競合がいない市場」で扱っていればDXは必要ないってこと?
そういうことですね。でも、そういう企業は少ないので、多くの会社でDXを進めようという動きになっているんです
DXの進め方
それで、どうやったらDXって進むんですか?
DXの進め方には、6つの段階があります
DXの進め方 6つの段階
- DXで目指す姿を決める
- 部署内のプロセスの一部を自動化・省人化する
- 縦割りの部署でデジタルを使った新ビジネスがスタートできる状態にする
- 全社横断の組織づくり
- プロダクトやプロセス、ビジネスモデルを根本からデジタル化していく
- デジタルがつねに浸透しきった状態(DXのゴール)
DXの進め方① DXで目指す姿を決める
「DXが必要なのはわかった。すぐに進めよう」と行動される会社も少なくありません。しかし動き出す前に、ぜひ一度「自社にとってDXした先にある目指す姿」を考えてみてください。
DXとは「データ(IT)を活用することで新しい価値を生み出すこと」。あなたの会社では、どんな価値を生み出したいですか?
新製品かもしれません。あるいは、社内事例を軌道に乗せてノウハウを得て、それをパッケージサービスとして販売することかもしれません。または、販売するモノではなく、ノウハウを獲得することそのものを目指すことになるかもしれません。
デジタルを活用することで、どんな価値を求めるのか。それがはっきりしなければ、どんな風に動けばいいかわからなくても当たり前です。
お出かけするからには目的地と地図が必要ってコトですね!
その通り。また、行先がわからなければ、徒歩なのか電車なのか車なのか、効率の良い移動手段も決められません。
これは業務を行う現場というよりは、経営判断になります。「DXを進めろと言われたけれど、なにから手を付けていいかわからない…」という方は、まず経営者やマネジメント層からヒアリングを行い、中長期的な経営方針を引き出すことが重要です。
また、経営者やマネジメント層は、「DXはあくまでも目指す姿に到達するための手段である」と言う意識を、担当者と共有することが大切です。
DXの進め方② 部署内のプロセスの一部を自動化・省人化する
方向性が決まったら、その目的を達成するためにもっとも関わりが深い部署・業務のプロセスの一部を自動化・省人化することを検討してください。
「全社的に業務を自動化すればいい」という話もあるかもしれません。実際に可能ならそれもアリなのですが、多くの場合、一気にRPAなどで自動化を進めるには手間もコストがかかります。
DXをスムーズに進めるコツは、①で決めた目的に対して素早くアプローチすることです。というのは、どの段階の工程も、一度のトライで上手くいくことは稀です。トライアンドエラーを短いサイクルで繰り返すことが大切になります。
そこはRPAの考え方と一緒なんですね
デジタル関係のプロジェクトは「アジャイル開発」と言って、短いサイクルでトライアンドエラーを繰り返す考え方が主流なんです。大切な考え方で、他の仕事で応用もききますよ
参考リンク:「変化の激しいVUCA時代を乗り越える『アジャイル』な考え方」
DXの進め方③ 縦割りの部署でデジタルを使った新ビジネスがスタートできる状態にする
全社とは言わないけれど、一部署内で新しいなにかが始められるようにしておくって意味ですか?
その通りです。いきなり全社で新規事業をはじめよう! と言うのもハードルが高いですからね
全社展開ともなると、他の部署の調整など社内の横展開も必要になり、それなりに時間が必要になります。まずは、ある程度トップダウンで新しい挑戦が可能な状態をつくっておきましょう。
一部署といっても、それでも関係者との調整は必要です。ここで社内コミュニケーションの重要性もわかってくるでしょう。
DXの進め方④ 全社横断の組織づくり
一部署で新しい挑戦ができたのであれば、次はいよいよ全社展開に向けて動き出します。
ここでは進め方④で行った関係者とのコミュニケーションをさらに発揮する必要があります。一部署であれば、ある程度トップダウンで強制力を持たせることも可能ですが、横展開になるとそれだけではうまくいきません。関係者の「協力」を引き出すことがカギになります。
DXの進め方⑤ プロダクトやプロセス、ビジネスモデルを根本からデジタル化していく
ここからがいよいよDXの本質です。
これまではあくまでも新しいチャレンジが可能な体制づくりでした。この段階では、新しいチャレンジはデジタルを基本としたものとなります。
たとえば、②で自動収集したデータを用いて新サービスを考案し、それを全社的に実行して収益を上げる(あるいは社内業務の効率を最大化する)ことができる状態です。
DXの進め方⑥ デジタルがつねに浸透しきった状態
社内のやりとりはすべてチャットやメール。顧客ともメールやテレビ会議でコミュニケーションを取り、もし紙による書類があってもAI-OCRでデジタル化して即座に社内データベースに保存される。
社内データは定期的にRPAロボットによって見やすい状態にデータ加工され、それをもとに社内で企画を検討。市場調査もロボットによって収集したデータを、アナリストが分析して判断。
素早く市場にサービスを投下し、さらにロボットが顧客の反応を収集してデータを蓄積し、改良を重ねていく…。
これがDXの先にある、デジタルが浸透し、つねに新たな価値を生み出せる組織の状態です。
DXって途方もない時間がかかりません?!
おっしゃる通り。DXって実はすっごく時間がかかるんです
自社のDX推進度がチェックできる!
IPAから「DX推進指標 自己診断結果入力サイト」が提供されています。
これは、企業が自社のDXへの取り組みの現状について、簡単な自己診断が可能なものです。自己診断結果を他社と比較でき、DXの現状についての認識を社内で共有することができます。
DXの進め方はじっくりと組織を変えていくプロセス
RPA導入って、DXのごく一部分だったんですね…
デジタル化やRPA導入はDXを進める上での大前提です。それなしにDXはあり得ないと言ってもいいですよ
近年、「DX推進」のキーワードだけが先行していて、「RPAを導入してDXだ!」「データベースをつくってDXだ!」とツール導入ありきの事例を耳にすることが多くなっています。
ですが、DXはなにかのツールを導入すれば終わりではなく、あくまでも会社・組織の「目指す姿」の実現のために、業務プロセスを見直し、可能な部分はデジタルツールを用いて自動化・省人化し、組織体制を柔軟にして新しい価値やサービスを生み出せる好循環を生み出すための考え方です。
DXが「考え方」であり「状態」であるということを理解していないと、ツールを導入しただけで会社になんのメリットも生み出さず失敗に終わってしまう…という結末になりかねません。
それでは、せっかくDXに挑戦しようと思ったのにもったいないと感じます。
DXはこれからのビジネスに必要不可欠な視点です。
大切なのは、どのように進めていくか。
進め方、そして考え方さえ押さえておけば、たとえ一度や二度失敗しても次につながり、確実に会社や組織の「目指す姿」に近づいていきます。
次回から「DXの進め方」の各項目をより詳しく解説していきますよ
ぜひよろしくお願いします!
つづく
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