事例:BPR 直接支払交付金に係る事務の効率化に向けての調査

第三者視点が入るからこそできる
農業者と職員を支えるための事務効率化プロジェクト

事例:農林水産省 直接支払交付金に係る事務の効率化に向けての調査

現場の声をすくい上げ、かつ従来の枠組みを超えた業務改革の可能性を探る――。農業者と職員を支えるための事務効率化プロジェクトが農水省で始動しています。その第一歩として水田活用直接支払交付金に係る事務効率化の調査業務を、ロボフィスが受託。第三者視点だからこそ可能なロボフィスのBPRについて、ご担当者である農水省の末廣さまにお話をうかがいました。

※ビジネス・プロセス・リエンジニアリング。業務の流れや仕組みそのものを根本から見直し、効率化や生産性向上を目指す改革手法。

農林水産省 農産局
企画課 水田農業対策室
土地利用型農業推進班
企画普及係長

末廣 景亮 さま

─まずは今回ロボフィスが受託した「水田活用直接支払交付金に係る事務の効率化に向けた調査業務」について、取り組みの背景をお聞かせください。

末廣:ご存じの通り、日本の農業は、農業者の高齢化が進行しております。そして、現場で農政に係る事務に従事し、制度や営農を下支えいただいている職員の数も減少している状況です。今後、日本の農業を維持、発展させていくには、現場の課題を克服するための政策を講じていく必要があるのですが、まずは、現在、全国の多くの農業者に活用いただいている水田活用直接支払交付金(以下、水活交付金)に係る事務を効率化していかねば、ということで、今回、ロボフィスさんに事務執行の実態調査をお願いした次第です。

─今回の調査業務の概要について、簡単にご説明ください。

末廣:日本は諸外国と比べても国土が狭く、農地面積が限られております。そんな中で、主食である米を農業者に安定的に生産いただき、食料自給率を向上していくためには、水田を有効活用していくことが大事です。そのため、水田を活用した麦や大豆といった水稲以外の作物等の作付けの定着や地域の特色を活かした産地づくりの推進に向け、国から農業者に対して、水活交付金をお支払いし、農業を支援しております。

水活交付金に係る全体のフローとしては、先ずは、「地域農業再生協議会」(以下、再生協)が農業者からの申請を受領し、その後、再生協や地方農政局等において申請内容や取組内容の確認・審査がなされ、最後に、農林水産省から農業者へ直接、交付金をお支払いします。

水活交付金支払いまでの全体の流れ

再生協や県拠点等の現場の職員の皆さんは、交付金の交付を始め、事業の円滑な実施に向けて各種事務にご対応いただいている状況なのですが、職員数の減少や農業を取り巻く環境の変化に伴う制度改正等により、職員一人当たりの事務負担量は年々増大しております。
事務全体の中で大変な業務は色々あるのですが、特に、申請内容と取組状況を照らし合わせるための、現地状況の確認に係る事務が大変であるとお聞きしております。現地へ確認に行くまでに台帳等を参照して、水田の情報を整理しておかなければなりませんし、夏の炎天下の中、申請のあった筆を一つ一つ、職員自ら赴き確認することもあるようです。

また、現場の職員の皆さんがきちんと事務を処理されていく中では、地域ごとに独自のルールに基づく作業が発生し、知らず知らずのうちに、事務負担が増大してしまっているようなケースもございました。

農業を取り巻く情勢は激変しており、国としては農業構造の転換を図っておりますが、地域の実態を踏まえつつ、効率化が図られた事務運営方式もセットで現場に下ろし、持続可能な制度の在り方も検討していく必要があります。

そのため、今回、ロボフィスさんには業務改革を見越した調査を依頼しました。調査では、再生協および県拠点、あわせて全国8エリア16カ所へ出向き、現場職員の方のご意見をヒアリング。その結果をもとに業務改善案をご提出いただきました。期間が二カ月間と、かなり厳しいスケジュールのところを、ロボフィスさんに完遂していただいた次第です。

─調査をするにあたって、委託事業者にはどのようなことを期待されていましたか。

末廣:1点目は、現場をヒアリングするにあたって業務をご理解いただいた上で臨んでいただきたいと考えていました。正直なところ、農水省の管轄で行っている業務は独特な言い回しや制度が多く、説明文書も何十ページにも及んでいて、理解は難しいと思います。ですが、ロボフィスさんはわずか一週間で業務内容を理解して紐解き、フローチャート図まで描き起こしてくださったんです! これは驚いたと同時に、ありがたかったですね。実は業務フローが複雑になり過ぎていて、各担当者もなんとなく進めていた部分があったんです。役人というのは、文書にするのは得意なのですが、図でまとめるというのが案外苦手とするところで、ぱっと見て「この工程はムダかも」とすぐにわかる感覚が新鮮でした。そのフロー図は、今も別業務で活用させてもらっています。

業務のフローチャート図(一部)

ヒアリング自体も限られた時間の中で、ヒアリング先の組織における事務運用の確認から、ボトルネックとなっている事務の抽出、それらに対応する効率化案に対する感触や要望の聴取まで、丁寧に行っていただきました。

2点目は、現場に寄り添っていただく姿勢を重視していました。現場で事務作業を担当されている方々は、長らく農業者に親身になって支えてくださった方たちです。その職人気質な視点も非常に貴重なもの。一方でデジタルツールの導入などには抵抗感を抱く方もおられて…私自身も「デジタル=冷たい」といったイメージを持っていたくらいなので、農水省の視点から抜本的な改革というのは難しい部分がありました。

その辺りをロボフィスさんは現場の方に寄り添い、非常に親身になって粘り強く現場の方とコミュニケーションを取ってくださいました。ヒアリングの終了後に、改めて本音を語ってくださったシーンもあったと伺っていますし、アンケート結果からも現場の実情が見えてきて、非常に参考になりました。我々が直接ヒアリングしても、おそらくこういった意見は出てこなかったでしょう。第三者に依頼する意義を十分体感できました。

3点目は、抜本的な見直しをご提案いただくことを期待していました。我々では業務効率化を考えても、やはり従来の業務フローの一部をデジタルツールに置き換える、といった対処療法に終始してしまうんです。しかし、すでにそれでは不十分なほど現場は疲弊しています。第三者視点で、大きな変革案を提案していただきたかった。

ロボフィスさんからは、既存の水活交付金に係る規律に基づく正規の事務フローについて、ステークホルダーごとに図示、体系化いただき、さらに最新のBPR事例や自治体のDX事例、最新テクノロジーの活用方法などをもとに改革案をご提示いただきましたまた、ツール導入ありきではなく、制度を抜本的に見直したご提案も、省内から評価が高かったですね。民間企業の視点や考え方も学べましたし、内容も我々にとっては新鮮で、上層部も含めて省全体の改革への機運醸成につながったと感じています。

提案内容の一部(「令和6年度 水田活用直接支払交付金に係る事務の効率化に向けた調査業務(請負)」より抜粋)

─ロボフィスに調査を依頼して、とくにご評価いただいたのはどんな点でしょうか?

末廣:先ほどお話しした業務フロー図はもちろん自由記述のアンケート結果を類型化した上でピポットテーブルでまとめていただいたのはわかりやすかったですね。我々の業務ではアンケートのお声を引用することがけっこう多いので、重宝しています。やはり見やすい資料はいいですね。我々も書類の様式を見直しているところなのですが、参考になりました。

また、ロボフィスさんは本当に親切だと感じました。実は私自身、外注先と協力して調査研究事業をフロント担当として進行していくことが初めてだったので、調査が始まる前は不安を抱えていたんです。しかし、ロボフィスさんはあらかじめ検討事項を洗い出してくださるなど積極的に提案してくださって、その分私はヒアリング先の調整をきめ細かく対応することができました。ご提案の仕方も、「~であるべき」といった強い姿勢ではなく、現場の温度感も踏まえた上でニュートラルにご提案いただきました。気が付いたら不安は払拭されていて、本当に頼りに感じていました。当初、デジタルツールを扱う企業というのは「冷淡な社風なのでは…」と勝手なイメージを抱いていたのですが、ロボフィスさんはとても温かな人情味を感じましたね。「この企業とならこの先の課題も乗り越えていけるだろうな」という前向きな気持ちになれました。

─今回の調査結果を踏まえて、今後の展望をお聞かせください。

末廣:今回の調査結果を糧に、令和7年度においては水活交付金に係る事務の効率化に向けた方策が実際に現場で機能するか確認するための実証を実施していく予定です。具体的には、電子申請アプリケーションのPoCやプロトタイプを作成したり、事務を担当される現場職員の皆様にとって現地確認の効率化に役立つカタログやガイドラインといったコンテンツを作成したり、常識を覆す、今までにないような現地確認手法の有効性を確認したりし、事務の効率化方策を具現化していきたいと思います。

事務仕事というのは表舞台には立ちませんが、農業者にとってもっとも身近な窓口であり、農業を支えている現場のひとつでもあります。この部分の業務効率化を推進するべく、今回ロボフィスさんにご協力いただいた調査結果を今後も活かしていきたいと考えています。

─本日はありがとうござました。

(取材/2025年9月8日)

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